2025年10月、全国の織布産地を束ねる「日本綿スフ織物工業連合会(以下、綿工連)」の事務局会の皆様が、遠州産地の視察のためご来訪されました。
綿工連は1948年に設立された業界団体で、綿および再生繊維(スフ)を扱う織布関連事業者を支援し、産業振興や販路開拓などを通じて、繊維産業の持続的な発展を目指して活動されています。事務局会は、全国の産地組合の事務局担当者が集まり、情報交換や現場視察を通じて産地間連携を深める重要な機会です。
今回の視察には、九州、広島、岡山、和歌山、兵庫、大阪(泉州・南部)、愛知(知多・三州)など、全国各地の組合事務局の皆様が参加されました。遠州織物工業協同組合のアテンドのもと、古橋織布および浜松注染を手掛ける二橋染工場の2事業所を訪問されました。
古橋織布では、製織現場の様子や取り組みをご覧いただいた後、ショールームにて弊社の事業概要をご紹介しました。弊社は約30年前より問屋を介さず、直接顧客に製品を届けるスタイルを採用しており、数少ない「直販型」の織布事業者です。
遠州地域は1970年代に生産量のピークを迎えましたが、円高や海外製品の台頭により、現在では織布事業者の数は最盛期の1600軒超から約40軒にまで減少しています。その中で弊社が事業を継続できている背景には、独自の生地開発と販売手法の工夫を地道に積み重ねてきたことがあります。
また、近年は生産工程のDX化にも注力しており、Google Chatを活用した情報共有の仕組みを導入しています。検反結果やトラブル情報をリアルタイムで機場の織子に共有することで、シャトル織機の迅速な調整・修理が可能となり、品質向上に寄与しています。特別な機材を導入することなく、既存のツールを活用した業務改善の一例として、視察された皆様からも高い関心を寄せていただきました。
今回の視察を通じて、産地間での情報共有の重要性を改めて認識するとともに、各地で奮闘されている事業者の皆様が課題解決のヒントを得る機会となることを願っております。
織布産業を次世代に継承していくためには、産地内の連携のみならず、産地を越えた交流がますます重要になってきています。弊社としても、他産地の現場を積極的に知り、学び合う姿勢を今後も大切にしてまいります。